恩師からのハガキ

「先日はおはがきをありがとうございました。
お元気でスペイン語の勉強に励んでおられる様で、何よりのことと思います。

昭和23年に旧制最後の入試が実施された際、東京外語のスペイン語学科を志しながらも、当時地方に住んでいたため、経済的に到底不可能で、止むを得ず断念したことを思い出しました・・・」。

今、先生は75歳ぐらいのはず。
彼は私の高校の英語教師だった。見た目も中身も普段はとても真面目で厳しい採点をする先生だったけれど、授業の合間に話してくれるお話がとても興味深く、自分への挑戦に満ちていて、私はこの先生の授業が大好きだった。

確か出身は樺太だったと思う。
終戦後本州にやってきて、働きながら通信制の大学で英語教師の資格を取り、高校の英語教師になったのは30代半ばを過ぎてからだったと記憶している。
退職してからは、東京のハトバスに乗って、外国人観光客向けの通訳ボランティアとしてしばらく活躍されていた。そして、資格マニアでもあり、いろんな免許を取って楽しんでいる人だった。いろんなこと思い出してきたぞ。

彼が定年退職をする年の、最後の授業の日。
私からクラスメイトに提案をして、花束を贈った。喜怒哀楽をあまり表に出さない先生だったので、そのときの彼の表情は覚えていない。

でも後日、クラスの生徒全員に素敵なハンカチが手渡された。
そのときに、先生が花束をすごく喜んでくれたのだということが分かった。
もちろん、今も大切に使っている。

今回届いたハガキで、先生が昭和23年という時代にスペイン語という言語に興味を持っていたことを初めて知り驚いた。そして先生との共通点を見つけて嬉しくなった。

どうしてスペイン語だったのだろうか。
いつか、聞いてみよう。今なら私にも語れることがありそうだ。