Tu casa es mi casa . (あなたの家は私の家)

チリに来てから3ヶ月間、スペイン語を教えてもらったカルロスの自宅へと招かれた。
彼にはスペイン語以外にもいろいろなことを教えてもらった。
チリの歴史、政治、社会が抱える問題点、チリ人の恋愛観、家族、・・・脱線しすぎて英語の会話で盛り上がってしまったこともあった。

最初の1ヶ月間は、何も伝えられない、聞き取れない、で気持ちが一時的に不安定になった。「今日は何も頭に入りません!」と教室で叫んでカルロスになだめられたこともあった。2ヶ月を過ぎた頃から、何となく周りにいる人たちの言葉が理解できるようになってきた。あれだけ覚えにくかった新しい単語も頭に残りやすくなってきた。

今週の月曜日に期末テストが行われた。
3ヶ月前には全く理解できなかったスペイン語の問題を今は読み、理解をして、答えを記入している自分に感動をした。そして良い成績を残すことができた。

彼は語学を教える人間として最も大事なものを持っている。
それは、「この人にスペイン語を教えたい!」という情熱だ。そして私を信じて変わらず叱咤激励をしながら見守ってくれた忍耐強さ。
私は自分のためにスペイン語を勉強している。でも彼の熱意にも応えたかった。どんなに疲れていても必ず予習、復習はした。宿題も何か工夫をして提出するようにした。
時にはさぼりたくなる日もあったけれど、カルロスの悲しそうな顔が浮かんだ。
褒めるときには、「さすがボクのマウ!」と自分のことのように喜んでくれた。
教える側、学ぶ側、双方の努力があって私は頑張ることができたと思っている。
基礎を大切に日々積み重ねていけば、必ず自分の努力は自分自身に返ってくる(その反対もしかり)。


カルロスの家族と記念撮影。お父さんとお姉さんには残念ながら会えなかったけれど、昼食を食べた後で折り紙を折ったり、どんなに家族が大切かお母さんが話をしてくれたり楽しい時間を過ごした。

どこの家族を見ても感じるのだけれど、チリの家族は大人だろうが子供だろうが対等な関係を築いている(お父さんは頑固な人が多いかも)。母親は特に子供たちに対して、決して一方的に押し付けるのではなく、彼らの言い分を良く聞いてから助言をしている。
そしてチリの人々は働き者だ。父親、または母親はものすごい時間を労働に費やして家族を養っている。子供たちはそんな両親を見て育つから早くから自分の物は自分でお金を貯めて買ったり、無駄使いをしないようになる。何よりも心から両親を愛し、尊敬をしている。

頭ごなしにしかったり、上から押さえつけることの多い日本の家族の姿を思い出した。
子供は規則やルールではなく、昔から言われているように親の働く姿や自分に対して惜しみなく与えられる信頼と愛の中で育つものなんだ、と彼らを見ていて思う。
カルロスと12歳離れている妹さんは完全には治癒することの難しい病気を抱えている。発作はいつ起きるか分からないから、朝だろうが夜だろうがもし彼女に何か異変が起これば家族が団結をして妹さんを支えている。

カルロスはわたしにこう話してくれた。
「自分に妹ができたと知ったとき、ものすごく嬉しかった。妹の病気を思うといつも心配だし、経済的にも大変だけれども、彼女がこの家にやってきてくれて(産まれてきてくれて)、変な言い方だけれど病気のおかげで家族の絆はより深まったんだ。みんなで協力しないと支えていけないからね」。

私の家族、あなたの家族。
「いま」を一緒に過ごせることは本当に幸せなことなのだ。「たまたま」家族としてこの世に存在していることに、もっと深い意味があるのかもしれない。