転がれ石っころ

こどもの頃の夢。

やわらかい、ふかふかの草で覆われた小高い山の斜面を、でんぐりがえしでごろごろと転がっていく夢をよく見た。自分が登っているのか、下っているかは分からなかった。ただものすごく気持ちがよくて、いつまでもいつまでも転がっていきたかった。目覚めても身体に残る感覚。
どこからが夢で、どこからが現実?

この世界に勢いよく飛び出してきた石っころ。

どこまでもこのまま走っていけると思う瞬間。
ああ、少し休みたいと思う瞬間。

ときにころがることをやめて、ただこの地に存在してみる。
通り過ぎていく人たち、傍観しながら、ただただ息を殺しながら。

だれかに蹴られてまた動きはじめる。

どこに向かっているのか、わたしの意思なんかお構いなしに、全く意味不明の場所にぽつんと一人取り残されることもある。

他の石っころたちとカチカチ音を鳴らして、時に火を熾し合いながら、形は少しずつ変化していく。
外側から見える部分と見えない部分。わたしの内側がみしみしと音を立てる。

あなたと関わりながら、私は変化する。
私と関わることで、あなたの中の何かが変わる。

自分が生まれてきた意味を考える。
答えは出ない。出なくてもいい。

ころがる、ころがる、ころがる・・・。


「どこへいくの?」

「さあ、どこでしょう」。

私は笑いながらこたえる。