「日本人はみんなお金持ち」①

今まで住んでいた家を出た一番の理由は、その家の夫婦に対する不信感からでした。

私は月に日本円にして3万円の家賃を支払っていました。住み始めると思い出したように、「ああ、自炊をするなら頻度に関わらず月額ガス&水道使用料12,000円を余計に支払ってね」と言われました。
驚いて、「え?なんでそんなに高いの?」と聞いたら、「ブエノスはガスも水道もものすごく高いんだよ。そしてレストランも高級なところしかないから、使用料は高いと感じるかもしれないけど、実は一番経済的なんだよ」と耳打ちされました。

「ブエノスの物価はかなり安い」と聞いてきたのに、彼の言う値段は高すぎるんじゃないか?と思ったもののまさか嘘を言っているとは思いもしませんでした。結局、私はガスではなく電子レンジ料理をしていたので、エクストラの出費をすることはありませんでしたが、街に慣れてきて周辺を歩きまわっていると彼が言ったような高い店は本当に少数で、後は安く美味しく食べれるレストランばかりであるということに気づきました。

他にも「お金、お金」と言う彼らの口ぶりに居心地の悪さを感じてきました。
私はこの家を出ようと考えました。

最初にこの家に来たのは3月15日。そのときは、「たぶん・・5月末まで居ます」と言って暮らし始めました。お金は4月15日まで支払っていたので、15日に家を出ようと考えました。

早速彼らに、「お世話になりましたが、4月15日でここを出ようと思います」と伝えるといきなり激怒。私の話なんて聞いてくれません。一方的に、「お前は嘘つきだ!俺たちの生活はどうなるんだ!」と言われて、私はもうその変貌ぶりに驚いてしまって目を大きく見開くことしかできませんでした。
続けて、「今日(3月末)出て行ったとしても、5月末までの家賃とペナルティーを支払え!」。

びっくりです。
この家は「家族の親切」でやっていることなので、看板も出していないし、ホステル登録もしていないんだと彼らはいつも自慢げに語っていましたから(ということは、税金も支払っていないということです)。「俺たちの生活をどうしてくれるんだ!」と言われても私の方が困ってしまいます。
彼らの怒りで震えるスペイン語は早さを増し、私は椅子に座ったまま、彼らは私を見下ろして仁王立ち。まるで蛇に睨まれた蛙状態。

「どうする、わたし?」
懸命に頭をフル回転させましたが、そのときはまだ相談できる人もいなかったので自分で判断をするしかありませんでした。彼らは私には分からない、「ブエノスのルール」とやらを盾に私に迫ってきます。「お前は法律違反だ!」と言われると、私のスペイン語力では対抗する術もありません。「ああ、もっとしゃべれたら!」と痛切に感じた瞬間。

「彼らに言われたお金を支払って出て行くか?」と何度も考えましたが、それもくやしいし何よりも私にはそんなことにお金を使う理由が無いのです。「ちょっと一人で考えてきます!」と言って、彼らの制止を振り切って、外を1時間くらい歩きました。

その結果、「今は勉強に集中しなければいけないし、どこへ行ってもこういう問題は付いてくるのかもしれない。我慢することになるけれど、5月末までここにいよう」と決めたのでした。


つづく。

「お前はだまされやすいにゃ!隙がありすぎるにゃ!」

・・・・うう、わかっているのよ・・・。