鼓動
ブエノス在住23年の友達についてきてもらって、ようやく恐怖の館に手紙を取りに行った。
チャイムを押すのを少しためらっていたら、友達が容赦なく押した。
さすが、ブエノス・アイレスの燃える女。
久しぶりに会うウーゴは、頼りなげな笑顔を浮かべながら私宛ての手紙を渡してくれた。「げんき?」と社交辞令的な挨拶を交わすも気持ちはうわの空。
手元には1通のポストカード、3通の手紙、そして1通の書籍小包。
開けるのがもったいなくて、なかなか開けられず・・・なんども手紙の表や裏の字を眺めていた。
ポストカードには、彼女の新しい住処の風景がコラージュ。懐かしい日本の山や神社の写真。木々や木造住宅の湿り気。
ちいさな雑誌には、わたし好みの写真や文章がたくさんつまっていて、思わず一気に読んでしまった。もっとちょびちょび読みたかったのに。
障子紙に筆ペンで豪快に綴られる手紙。
手紙なのに、まるで彼女が目の前にいてしゃべっているみたいだ。
素直な文章に大笑い。
最後に開いた手紙。
英会話学校で働いていたときの生徒さんたちで、今はお友達のお二人。
何枚にも渡って書かれている手紙の中にはさまれていたもの。
それは教室で撮影された三人の熟女たちの写真。
それを見たら、おいおい泣いてしまった。いたいよ〜。
自分の部屋で良かった。
日本で私を想って手紙を書いてくれたり、応援してくれる人たちがいる。
それぞれの課題を抱えながら、みんなも日々の生活をキラキラ輝かせながら毎日懸命に生きている。
そう思ったら心がしゃんとして、落ち着いた。